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デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (文春文庫) 感想

デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士/丸山正樹著 を読みました。

デフ・ヴォイスは、コーダーとして巧みに手話を操ることができる主人公の荒井を中心として、ある事件の法廷通訳を受けたことをきっかけにその真相に迫るというサスペンス小説です。

彼が手話を巧みに操ることができる理由は彼が家族でただ一人の聴者であるためです。彼は幼少時代、ただ一人の聴者であることから家族と社会の橋渡し役(コーダー)となっていました。荒井は警察時代のある事件により、職を辞し、現在は生活の為、手話通訳士の道を選びます。彼はある法廷での通訳を受けたことから、彼が職を辞すきっかけとなったのは事件につながる事実に向き合うことになります。

まず、この小説を読んで初めて知った事項として、手話には「日本語対応手話」と「日本手話」という二つの手話があることです。前者の「日本語対応手話」は日本語の文法や語順に手話を当てはめたもので対応手話・シムコムと呼ばれます。また、後者の「日本手話」は言語学的にはクレール言語に近く、ビジン言語である日本語対応手話とは文法がことなります。

日本語文法が身に付いている人達にとっては、日本語対応手話は日本手話よりも覚えやすいため、主に日本の難聴者や中途失聴者に使用されます。また、聴者が使用する手話は、日本語対応手話であることが多いとされています。しかし聾者にとって母国語は「日本手話」であり、「日本語対応手話」は第二言語に過ぎません。

荒井はコーダーとして多くの聾者にとっての母国語である「日本手話」を巧みに操ることができます。実はこの小説ではあるコーダーの存在が重要なキーワードになっています。


あと、この小説の核となっているのはファミリーという言葉でしょう。

9章の手塚の会話では後半、ファミリーの二つの意味が隠されていることに気づきます。
「荒井さん、あなたには失望しました」  自分が門奈のことを売ったのを知っているのだ。体温が上昇するのがはっきりと分かった。羞恥か、屈辱か。何の感情か分からぬまま、かろうじて、口にした。 「なぜ──なぜ、ここまでするのですか」  瑠美は、少しも表情を変えず、答えた。 「門奈さんは、私たちの大事なファミリーですから」  その眼が、射るように荒井をとらえた
-第9章 裏切り-

また、荒井にとっても家族は重要なキーワードです。彼は幼少時代、聞こえることよる家族との壁を感じていましたが、事件をきっかけとして過去の自分とその家族について向き合うことで成長をしていきます。

 この小説にはいろいろな要素が含まれています。聾者のコミュニティのありよう、陥りやすい現実などです。それ自体は、この小説が社会的に示したいテーマの一つといえるのですが、それとは別の要素として「聴こえる」ということとより「伝えようとする」ことの大切さや、家族の大切さといった小説の別の側面の面白さとしてあるのかなと考えました。

シークレット・レース 読書感想

 

ランス・アームストロングの著書「ただマイヨ・ジョーヌのためでなく」を読んで、僕は彼のファンになった。前立腺がんから奇跡の生還を果たして、ツール・ド・フランスの7連覇するというストーリーはまさにヒーロに相応しい物だった。ライバルやマスコミへのスポーツマンらしからぬ攻撃的な物言いも勝負に対する真摯な姿勢の裏返しと考えていた。

 

そんな彼のパフォーマンスに当時からドーピング疑惑がつきまとっていたのだけど、ランスは長年それを否定してきた。しかし、昨年、全米アンチドーピング機関(USADA)からの告発を受け、また彼自信もドーピングを認めた。そして、彼は自転車業界から永久追放をされてしまった。

 

僕は永らく彼の虚構に騙されてきたことを知って、本当に当惑してしまった。ランスは本当にドーピングに手を出してしまった、弱虫野郎だったのだろうかと。

 

本書は輝かしい実績を誇りながら、ドーピングによって失墜した元自転車ロードレーラー、タイラー・ハミルトンが、現役時代のドーピング使用を赤裸々に告白するだけではなく、当時のロードレース界全体で、パフォーマンス向上物質が使われていたことを告発したものである。

 

本書で彼は以下のように語っている。

 

(P174) ルールを破っていいたのは自覚していた。だけど、いかさまだとは考えていなかった。
誰もが同じことをしている。だから、同じ条件で公平に争っていると感じていたのだ。

 

凡庸な選手がドーピングによって突然トップアスリートとなったりはしない。ランスやタイラーを始めとするトップ選手は、怠惰と悪魔の甘いささやきによってドーピングに手を出したのではなく、トップを争うしのぎを削る勝負において残りの数%のフィジカルの差を決定的にしないためにドーピングを行なっている。

 

彼らは誰よりも速くなろうとする純粋な目的において、ルールを破ることをあえて選択したのだろう。

 

これにはドーピングを個人のモラルの問題として取られるだけではなく、自転車業界の自浄努力を持って根絶を期待すべきであろうと思う。

 

ドーピングが一部のモラルハザードによって行われるのであれば、残りの大部分の人間にスポーツマンシップを期待することができるが、業界全体に蔓延しているのであればそこにそれを期待するのは難しいと思う。濁った池の中で清らかに生きることは難しい。

 

またこれは、自転車業界だけの問題ではなく、プロスポーツ全体の問題として捉えることができるだろう。多くの金銭が動くプロスポーツにおいてこそ、この闇マーケットが機能しうると考えるからである。

芥川賞とか


 今日もあまり時間がないのでジョグのみです。5分/kmぐらいが適当な感じです。


 今年も芥川賞選考の時期になりましたね。最近はこういう機会でしか純文学を読む機会がないので、欠かさず受賞作には眼を通しています。忘れずに文藝春秋の3月号をアマゾンで予約しておこうと思います。まあ駅の売店でも買えるのですがね。

情報セキュリティ関連書通読

  問題集を2周したので、また教科書を通読中。10月から新しい事業所に異動が決まりました。


情報セキュリティ基盤論

情報処理技術者試験対策書 高度専門 セキュリティ技術―新試験対応

読書記録 刑務所図書館の人びと―ハーバードを出て司書になった男の日記

刑務所図書館の人びと―ハーバードを出て司書になった男の日記

  とても面白かった。おすすめです。



厳格なユダヤ教徒の家庭に育ち、ハーヴァード大を卒業した著者。大学を出てふと立ち止まった。あれ? 自分って何がやりたいんだっけ? そんなときに舞い込んできた一枚の求人票。「ボストン、刑務所図書室司書、フルタイム」。ひとたび、塀の中へ足を踏み入れてみると、そこは人生の交差点だった……。刑務所の図書室に集う人々との出会いを通して、彼自身も変わっていく。アメリカの今を描く、注目のノンフィクション。



  何か?を求めて刑務所図書館に就職したハーバード大卒の青年のお話。内容は刑務所図書館という稀有な環境での数々のエピソード、印象的な人々との出会い。

出所後に夢を叶えようとした受刑者
メサイア(救世主)と呼ばれた受刑者
皇帝ペンギンを見る受刑者
図書館の窓から中庭の息子を眺める受刑者
意地悪な刑務官

沢山の出会い、別れ、エピソードが何かを考えさせる。本当にやりたいこととはなんだろう。
青年の成長物語としての側面もあり、お勧めです。



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